ホーム関連動向学会近況横断追跡イベント事例広場知的財産文献案内|Q&A|


 Q&A


ビジネスモデル「探険」談 By 張 輝
>> 連載目次

第45回 ビジネスモデルとイノベーションU


 2011年に、マーク・ジョンソン著の『ホワイトスペース戦略〜ビジネスモデルの<空白>を狙え〜』の和訳版は発刊された。イノベーションを論じる名著The Innovator's Dilemma: When New Technologies Cause Great Firms to Fail(クレイトン・クリステンセン 著、玉田俊平太監修、伊豆原弓訳『イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』翔泳社、増補改訂版 2001年)は、ハーバー ド・ビジネス・スクール教授で有名なクリステンセン氏の著書であるが、本書はクリステンセン氏の友人で、戦略コンサルティング会社、イノサイトの会長であるマーク・ジョンソン氏の著書である。

 本書はP&G前会長兼CEOのA・G・ラフリー氏の「序文」から始まり、「第1部 成長と企業変革を実現する新しいモデル」、「第2部 新しいビジネスモデルが必要なとき」、「第3部 再現性のあるビジネスモデル・イノベーション」と続き、最後に「終章」といった構成からなるが、その基調にあるのはイノベーションによる新ビジネスモデルの創造であり、ビジネスモデル・イノベーションについても論じた著書であると言える。また、成功するビジネスモデルには必ず四つの箱が存在するという、本書で提起された「四つの箱」説は、比較的に簡潔明瞭であると同時に、四つの箱に関する多面的検証に納得できる面が多い。「四つの箱」説はビジネスモデル論に新たな視座を提供するものとして考えられる。。


 時は2016年になった。オリヴァー・ガスマン、カロリン・フランケンバーガー、及びミハエラ・チック著の『ビジネスモデル・ナビゲーター』の和訳版が発刊された。スイス・ザンクトガレン大学のガスマン教授は長年ビジネスモデルを研究し、成功企業のビジネスモデルは55種類のモデルパターンのいずれかに分類されるということを突きとめたという。ビジネスモデルのイノベーションは、天才のひらめきによって生まれると思われがちであるが、そうではなく、この55パターンの組み合わせや創造的な模倣によって、新しいビジネスモデルを創出することができるはずである、と氏は提唱する。

 本書は二部構成で、第一部は「ビジネスモデル革新の手引き」について述べ、第二部は「ビジネスモデル全55の勝ちパターン」について順に紹介した。加えて、付録の一つとして、「ビジネスモデル・イノベーション10の鉄則」も掲載された。天才のひらめきではなく、ビジネスモデルをシステマチックに構築するノウハウは、企業文化で日本と共通点の多いドイツでも多くの実績をあげている。また、Gassmann 教授と Frankenberger 教授は、長年にわたる各業界での革新的企業の成功の秘密についての研究と調査を続けていく中で、その革新が各企業のイノベイティブなビジネスモデルにあることに気づいた。さらに、その後の研究から、そうした企業の成功の鍵となったビジネスモデルのうち 90% 以上が、実は他の業界からのビジネスモデルを再構成したものであると指摘している。これは学問的にも実務的にも実に興味深い見解である。


>> ビジネスモデル「探険」談 連載目次


利用規約免責事項お問合せ個人情報編集後記
Copyright(C)All Rights Reserved