|ホーム|関連動向|学会近況|横断追跡|イベント|事例広場|知的財産|文献案内|Q&A| | ||
Q&A | ||
---|---|---|
ビジネスモデル「探険」談 By 張 輝 | ||
>> 連載目次 |
第4回 ビジネスモデル論への新しい視座〜「四つの箱」説 |
自宅近くの書店で『ホワイトスペース戦略』という書籍に出会ったのは、去る5月のゴールデンウィークの連休後であった。ビジネスモデルに関わる立場に長年身を置く1人として、「ホワイトスペース戦略」という書名より、「ビジネスモデルの<空白>を狙え」というサブタイトルに心惹かれた。ビジネスモデルについて論じた著書であることを期待して迷わず購入し拝読すると、本書はビジネスモデル・イノベーションについても論じた著書であることがわかった。 イノベーションを論じる名著The Innovator's Dilemma: When New Technologies Cause Great Firms to Fail(クレイトン・クリステンセン著、玉田俊平太監修、伊豆原弓訳『イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』翔泳社、増補改訂版 2001年)は、ハーバード・ビジネス・スクール教授で有名なクリステンセン氏の著書であるが、本書はクリステンセン氏の友人で、戦略コンサルティング会社、イノサイトの会長であるマーク・ジョンソン氏の著書である。本書は、同氏が2008年にクリステンセン氏、カガーマン氏と共同でハーバード・ビジネス・レビュー誌に発表した論文“Reinventing Your Business Model”(邦訳「ビジネスモデル・イノベーションの原則」DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー2009年4月号)を発展させたものである。 ちなみに、ジョンソン氏はハーバード・ビジネス・スクールでMBAを、コロンビア大学では土木工学と工業力学の修士号を取得し、アメリカ海軍、ブーズ・アレン・ハミルトンを経て、2000年にクリステンセン氏と共同でイノサイトを設立している。そして同社は、イノベーションを基軸にした戦略コンサルティング会社であるという。 |
日本では、ビジネスモデルを論及する文献は多く、論文はもとより、著書として研究書や実務書も存在する。たとえば、寺本義也・岩崎尚人『ビジネスモデル革命』生産性出版(2000年)、HRInstitute著、野口吉昭編『ビジネスモデル構築7つのコンセプト』かんき出版(2000年)、白井宏明『ビジネスモデル創造手法』日科技連出版(2001年)、森雅俊・宗平順己・左川聡『ビジネスモデル設計のためのUML活用』毎日コミュニケーションズ(2006年)、安室憲一・ビジネスモデル研究会『ビジネスモデル・シンキング』文眞堂(2007年)などが事例として挙げられよう。 筆者の「第2回 ビジネスモデルを巡るさまざまな見解」で述べた通り、日本で言う「ビジネスモデルとはビジネスの設計図である」という松島説は、基本的な考え方として多くの方々に共感されている一方、具体的な構成レベルという観点から論じるなら、たとえば、「顧客」「価値」「経営資源(チャネル、ノウハウなど)」に視点を置く「三要素」説や、「顧客価値提案」「利益方程式」「主要経営資源」「主要業務プロセス」を枠組みとする「四つの箱」説、「市場モデル」「顧客モデル」「競争モデル」「アプリケーションモデル」「収益モデル」という「五つのサブモデル」説を例として挙げることができる。 このように多様になっている要因の一つは、経営学のアプローチや経営工学のアプローチ、また実学的なアプローチなどといったアプローチの相違に由来するものではないかと考えられるが、「顧客価値提案」「利益方程式」「主要経営資源」「主要業務プロセス」を枠組みとする「四つの箱」説は、冒頭で述べた書籍『ホワイトスペース戦略』によって提起し具体化されており、これはビジネスモデル論への新しい視座であるといえよう。 書籍『ホワイトスペース戦略』の概要、同書の特徴や実学的な意義、及び同書を読む際の留意点について、書評「イノベーションによる新ビジネスモデルの創造」を書かせて頂いた。ご関心を持たれる方は、ビジネスクリエーター研究学会機関誌「ビジネスクリエーター研究」第3号に掲載して頂いているので、ご確認、ご指摘、ご教示頂ければ幸いである。 |
>> ビジネスモデル「探険」談 連載目次 へ |
|
|利用規約|免責事項|お問合せ|個人情報|編集後記| | ||||||||
Copyright(C)All Rights Reserved |