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 Q&A


ビジネスモデル「探険」談 By 張 輝
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第38回 事業構想力とビジネスモデル構築力


 2016年6月中旬、都内にある企業の本社会議室にて、北海道や関西などの支社から来られた方も対象に含まれた「2日間幹部集中研修」の講師を務めた。事業構想力の確実な向上に直結する一環として、「ビジネスモデルの構築力養成」という名称で要請されたのを受けて、懇親会も入れて、2日間も話し続けていくのは最後になったら声が出なくなるのではないか、と当初若干危惧した(笑)が、無事終了。

 同社は、「継続的な事業運営において必要となる『安定した収入』『安定した利益』を得るためには、これまでの業務を確実に実施するだけでなく、世の中の動きに合わせた新たな事業を展開することも求められる。新規ビジネスの創出を目指した活動には、ビジネスモデルの基礎知識や経験知見が不可欠であり、今後の新規事業創出ならびに事業化の成功率を高めることを目的としたビジネス研修を実施する。」と、2日間集中研修の目的について説明された。

 実際、特定の企業に向けたビジネス研修はいつも同様であるが、事前に担当役員等の方に企業の方針や戦略、事業特性そしてとくに課題などについてヒアリングし、これを踏まえる形で研修資料を作成する。と同時に、参加者の方々に事前に受講アンケートを配布し、皆さんの関心点や要望、または現在の状況などについて確認する。作成した研修資料についての事前打合せはまことに重要である。

                
   
                
(左)研修室の窓から見た快晴  (右)筆者が解説中

 いわゆる「事業化プロセス/事業構想プロセス」というと、@事業アイディア⇒A事業性調査⇒B事業構想(ビジネスモデル構築)⇒C事業計画への拡張⇒D事業テスト、と筆者は整理するが、その前に、優れたビジネスモデルの条件とは←ビジネスモデルの構築法とは←なぜビジネスモデルなのか←そもそもなぜ新規事業なのか←時代的または社会的な背景とは、という点から考えるのが自然だろう。

 「21世紀の事業は、構想力がないと、その形が見えてこない。例えば、ラリー・ページとともに共同でGoogleを創業したセルゲイ・ブリンの話を、創業当時に理解できた人間は数人しかいなかったはずだ」と、大前研一氏はある連載で指摘した。同感である同時に、モーニング娘。のビジネスモデルは事前に意図的に計画されたのではなく、活動を行う中で創発的、事後的に形成されていった側面が強いのに対し、AKB48は、予め、創発を生み出す仕組みを組み込んだビジネスモデルして誕生したことが浮かんでくる。

 研修では具体的に、第1回「なぜ『ビジネスモデル構築力』が必要か」、第2回「『ビジネスモデル構築力』の基本的内容」、第3回「より理解する体験的学習(グループディスカッション)」、第4回「体験共有化と明日への助言」という構成であるが、多数の事例やデータ、実務経験などを基にして、できるだけディスカッション重視のもとで進めるのが筆者のスタイルである。参加された皆さんからの鋭い質問やコメント、あるいは真剣な確認などから、講師と受講者の方々との間の距離が段々と縮んできたことがよく分かる。

 初日午前、筆者は、はじめにとしてアンケート集計から、なぜ新規事業が求められる時代になったのか、他社事例(成功例と失敗例)から新規事業の創出(成功要因と失敗要因)を見てみよう、新規事業の創出が必ず直面する諸課題とは、事業開発におけるビジネスモデルの真の意味へ、という流れでスタートした。対話が続いているうちに、真剣で意欲的な皆さんとともに、「事業構想力とビジネスモデル構築力」についての探求心を強め始め、最後まで続いた。

 やはり、事業構想力を語るにはビジネスモデル構築力を語ることが不可欠だ、と思う。

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