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ビジネスモデル「探険」談 By 張 輝
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第3回 ビジネスモデルに与えられたグッドデザイン賞


 グッドデザイン賞をご存知の方は多いであろう。同賞は、総合的なデザインの推奨制度として、公益財団法人日本デザイン振興会が主催するものであり、その母体は1957年に通商産業省(現経済産業省)によって創設された「グッドデザイン商品選定制度(通称Gマーク制度)」である。以来50年以上にわたって、私たちの暮らしと産業、そして社会全体を豊かにする「よいデザイン」を顕彰し続けてきた(同振興会サイトより)。

 「グッドデザイン賞」は、家電やクルマなどの工業製品から、住宅や建築物、各種のサービスやソフトウェア、パブリックリレーションや地域づくりなどのコミュニケーション、研究開発など、有形無形を問わず、人によって生み出されるあらゆるものや活動を対象としているが、2011年度には「ビジネスモデルのデザイン」部門が創設され、ヤマハ発動機株式会社・ヤマハ発動機販売株式会社の電動アシスト自転車のリースシステム「パスクル」等が受賞した。

 Webサイト『Response』の報道によると、パスクルは官公庁・法人・企業向けに、電動アシスト自転車の車両・メンテナンス・各種保険や導入時の安全講習会をパッケージにしたリース・販売システムであり、販売子会社であるヤマハ発動機販売が2009年12月からサービスを開始し、2011年10月現在、全国66か所に導入されているという。

 「モノづくりのメーカーが、製品周辺に関連する保険やリースシステムをアレンジすることで、レンタル事業者がビジネスしやすい環境を提供したところが興味深く、可能性を感じる。今後メーカーが目指すべきひとつの姿であり、このような試みは積極的に応援したい」と評価され今回の受賞となった。

             

 一方、同社は「ビジネスモデルのデザイン」部門以外でも、高性能でスタイリッシュなフィッシングボート『SR-X』でグッドデザイン賞を受賞しており、スペース効率の追求により実現した優れた居住性や幅広いマリンレジャーに対応できる機能性、大胆でダイナミックなイメージをかもし出すデザインなどが評価された。

 グッドデザイン賞の対象はいま、デザインのあらゆる領域にわたり、受賞数は毎年約1,000件、50年間で約37,000件に及んでいる。賞はこの「グッドデザイン賞」と、複数の「グッドデザイン特別賞」で構成され、受賞したデザインには「Gマーク」をつけることが認められる。

 尚、ヤマハ発動機の「パスクル」以外にも、「ビジネスモデルのデザイン」部門で受賞した企業が多数ある。株式会社東急ハンズの「期間限定小売店舗『東急ハンズ トラックマーケット』」、株式会社クルックと伊藤忠商事株式会社の「プレオーガニックコットンプログラム 『PRE ORGANIC COTTON PROGRAM』」、株式会社一条工務店の「住宅用太陽光発電の導入費用立替販売での発電利益による『発電払い』システム『夢発電システム』」、株式会社平成建設の「建設業におけるビジネスモデル 『職人大工集団を主体とした平成建設の内製化システム』」、ライフネット生命保険株式会社の「インターネットを主な販売チャネルとする『ネット生保』という新しいスタイルの生命保険会社」、パナソニック電工株式会社の「UD認定制度『ユニバーサルデザイン定量評価手法の開発および社内商品認定制度の構築』」などである。

 同部門の審査長で居られる國澤好衛氏(産業技術大学院大学教授)は次のように審査の趣旨についての解説をされている。「人為的に製造または建造された人工物自体に着目するのではなく、ビジネスというある目的を達成するために考えられた活動の総体に着目した。したがって、対象をより俯瞰的に上位のレイヤーから捉え、それが適正に編集されているかどうかに注目し、特に、社会に対して適正な価値や意味を提示できているかを重視した審査となった。このような視点からの審査は、グッドデザイン賞の革新的な取り組みの一つである。」

 このような審査の視点に関する解説からも、ビジネスモデルの構築を考える上で重要なヒントと考えられる点があろうと、筆者は興味深く反芻している。

> 日本デザイン振興会


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