一方、同社は「ビジネスモデルのデザイン」部門以外でも、高性能でスタイリッシュなフィッシングボート『SR-X』でグッドデザイン賞を受賞しており、スペース効率の追求により実現した優れた居住性や幅広いマリンレジャーに対応できる機能性、大胆でダイナミックなイメージをかもし出すデザインなどが評価された。
グッドデザイン賞の対象はいま、デザインのあらゆる領域にわたり、受賞数は毎年約1,000件、50年間で約37,000件に及んでいる。賞はこの「グッドデザイン賞」と、複数の「グッドデザイン特別賞」で構成され、受賞したデザインには「Gマーク」をつけることが認められる。
尚、ヤマハ発動機の「パスクル」以外にも、「ビジネスモデルのデザイン」部門で受賞した企業が多数ある。株式会社東急ハンズの「期間限定小売店舗『東急ハンズ トラックマーケット』」、株式会社クルックと伊藤忠商事株式会社の「プレオーガニックコットンプログラム
『PRE ORGANIC COTTON PROGRAM』」、株式会社一条工務店の「住宅用太陽光発電の導入費用立替販売での発電利益による『発電払い』システム『夢発電システム』」、株式会社平成建設の「建設業におけるビジネスモデル
『職人大工集団を主体とした平成建設の内製化システム』」、ライフネット生命保険株式会社の「インターネットを主な販売チャネルとする『ネット生保』という新しいスタイルの生命保険会社」、パナソニック電工株式会社の「UD認定制度『ユニバーサルデザイン定量評価手法の開発および社内商品認定制度の構築』」などである。
同部門の審査長で居られる國澤好衛氏(産業技術大学院大学教授)は次のように審査の趣旨についての解説をされている。「人為的に製造または建造された人工物自体に着目するのではなく、ビジネスというある目的を達成するために考えられた活動の総体に着目した。したがって、対象をより俯瞰的に上位のレイヤーから捉え、それが適正に編集されているかどうかに注目し、特に、社会に対して適正な価値や意味を提示できているかを重視した審査となった。このような視点からの審査は、グッドデザイン賞の革新的な取り組みの一つである。」
このような審査の視点に関する解説からも、ビジネスモデルの構築を考える上で重要なヒントと考えられる点があろうと、筆者は興味深く反芻している。 |