コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)は2007年4月23~27日、中国・大連市版権局版権管理処(=課)の前処長で、現在、同市版権保護協会の会長を務める李東平氏を日本に招聘し、「ソフトウェア正規版化運動」の最新状況について、セミナー等で講演いただきました。
中国は、2001年の世界貿易機関(WTO)への加盟に伴い、知的財産権の保護状況を短期間で改善する義務を負っており、これまでにも、新規立法や法改正、運用面での施策などが次々と打ち出されています。このうち、企業などで利用するソフトウェアを正規版とする「正規版化運動」については、2000年以降、中央、省、市の順で、政府機関において実施されてきました。
2006年には、大手企業も同運動の対象とし、国有企業、外資投資企業、民営大手企業、中小企業の順で「正規版化」を推進していくことが定められ、地方政府に対して、具現的な方策の作成、問題企業の「ブラックリスト」公表、事情が深刻な企業への行政処罰などを求める、「企業内正規ソフトウェア使用の推進に関する実施方案」が、国家版権局、情報産業部、商務部、財政部など9官庁合同名義で発表されています。
このような状況の中、早くから「ソフトウェア立市」の戦略を立ててIT産業の振興に取り込み、ソフトウェア産業基地、ソフトウェア輸出基地、情報サービス・アウトソーシング基地などの国家レベルのプロジェクトが立ち上がり、2005年6月には、国家版権局により中国唯一の「国家ソフトウェア版権保護パイロット都市」として表彰されている大連市では、「正規版化」についても積極的な取り組みが見られています。
やはり国家級に位置づけられる唯一の「ソフトウェア・情報サービス交易会」が毎年開かれる同市では、版権局が、日系企業などを含む現地の約1,000社を対象に、正規版ソフトウェアの使用に関する説明会を昨年から18回開いており、①正規ソフトウェアの購入予算を計上して資金を確保すること、②ソフトウェア正規版化についての予定表の作成、版権局への提出と実施の確保、③知的財産権保護に関する長期間有効な体制を構築して各担当者の責任を明確にすることなどを現地企業に要請しています。
また、ソフトウェアの違法コピーを行っている企業に対しては、一定の期限を設け、その間に違法コピーを削除し、正規版を購入しインストールするよう求めており、期限内に対応しなかった企業については、企業名を「ブラックリスト」としてメディアに公開するほか、法的責任を追及するとのことです。
また大連市版権局はここ数年間で、著作権者からの告発に基づくもののほか、自主的な調査として、200社余りの内資系・外資系企業について公安などとともに立ち入り検査を行い、その一部を行政処罰に科しているとのことです。また、「ブラックリスト」制度について、リストアップした8社に最終的な確認を行ったところ、全ての企業から「すぐ改善するから公開を止めてほしい」との要望があったため、現在、公開を延期している状況にあるそうです。
李会長によると、07~08年の2年間で、企業ソフトウェア正規版化のプロセスを終わらせることのほか、大連市にある5,000社あまりの外資企業の約7割を日系企業が占めることから、正規版化推進は日系企業を重点に進めるとのことで、今後、ACCSのほか、日本貿易振興機構(JETRO)大連事務所などと連携し、現地での啓発活動を展開したいとのことでした。
これらについて、李会長は来日期間中、ACCSの「企業内不正コピー対策委員会」(委員長・浮川和宣(株)ジャストシステム代表取締役社長)会議のほか、約80人が聴講した、(株)大塚商会主催セミナー「中国政府が語る!違法ソフト撲滅活動の実態」などにおいて、報告・講演を行いました。
ACCSでは、上海事務所の活動を中心にした「中国プロジェクト」の一環として、今回の李会長招聘を実施しました。今後も、中国現地での活動に止まらず、日本における著作権保護・普及活動とも連携した各種の活動を展開していきます。
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