JCTBFと 上海技術取引所 と戦略的提携 に調印 |
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現地の風 > 特集・連載等 > 特別シリーズA 中国技術取引市場入門 |
近年、中国は四川大地震に象徴されるように、社会的にも歴史的にも重大な挑戦と厳しい試練を経験した。しかし、世界的な金融危機の衝撃を受けているにもかかわらず、不動産バブルなどと危惧する声も存在するが、国内総生産の増加速度は依然として世界経済の平均的水準よりも高く、経済の持続的な発展ぶりを見せている。中でも、中国における技術移転は急激に拡大しており、2009年の技術契約の取引成立総量は金融危機の真っ只中であったにもかかわらず史上最高値を示し、技術契約成約総額は3039億元で、前年度比14.02%増(2008年は19.7%)であった。 | ||||||
以下、中国科学技術省等『全国技術市場統計年度レポート』(2010年)に記載された統計値等から読み取れる、中国における技術取引市場の現状について述べる。 1 技術取引契約件数は若干減少するものの、取引成立金額等は引き続き増加 2009年、中国で締結された技術取引契約は21万3752件に上り、前年同期と比べて5.56%減少した。しかし、成立した技術取引契約の総額は3039億元であり、前年同期と比べて14.02%増大した。即ち、一件当たりの技術取引契約金額は上昇し続けており、2009年に成立された技術取引契約の一件当たりの金額は平均値として142.17万元にまで達し、前年同期と比べて20.74%増大となっており、1996年と比べ9倍も増加していた。 2 技術開発契約と技術サービス契約は技術取引の主要形態へ 詳細は次回で述べる予定であるが、中国でいう「技術取引契約」とは、@技術開発契約、A技術移転契約、B技術コンサルティング契約、C技術サービス契約といった4種類の契約形態に分類される。2009年には技術開発契約(1264.17億元)と技術サービス契約(1142.18億元)の合計は技術取引成立契約総額の79.18%を占めており、前年度に比べ20%近くの増加となった。これは中国国内における研究開発への需要やそれに応じる実力の向上を意味している。 3 電子情報技術の取引は依然としてトップに、製造技術や新エネ技術等が台頭 中国における電子情報産業は「改革開放」という国策が制定・実施されてから、持続的かつ急速に発展してきた分野である。中国はいまや全世界でも最大の電子情報製品の製造基地となっていると同時に、特に通信、高性能のコンピュータ、デジタル・テレビなどの領域では、一連の重大な技術革新に成功している。2009年、全国の技術取引の中で成立した電子情報産業関連の技術取引契約の件数は8万1129件で、全国技術取引総額の31.27%を占めている。また成立した取引総額は950.2億元となっており、他の分野を引き離して引き続き首位となっている。 一方、先進的な製造技術新エネや省エネ関連の取引も近年活発となり、これらが2位や3位に浮上してきている。 4 特許技術取引が若干増加し、実用新案の取引は確実に増加 特許による経済社会への貢献が明らかになり、社会全般が特許技術を重視する意識が著しく向上する中、特許の創出や活用の場は増えており、特許技術に対するニーズも旺盛である。2009年、特許技術の契約件数は5331件で、前年同期比22.47%の増加となっている。取引総額は309.3億元で、前年同期に比べ26.78%増大し、全国技術取引総額に占める割合は前年同期の9.15%から10.18%まで上昇した。その中で、実用新案取引契約件数は1784件で、取引成立総額は153.83億元、前年同期比で99.81%となった。 5 企業の技術イノベーションの主体的地位が安定し、技術取引への参加が活発に 中国企業は技術イノベーションの全過程に関与し、技術イノベーションの実現者または研究開発の重要な主体となった。2009年、企業の技術取引総額は昨年に引き続きこれまでの高値を更新した。成立した技術販売契約は13万8757件、成立契約金額は2630.55億元で、前年同期比12.72%増加し、全国取引総額の86.56%を占めた。技術購入契約は15万9991件で、成立した取引総額は2349.02億元、前年同期比8.57%向上し、全国取引総額の77.3%を占めた。 6 技術輸出入契約は持続的に増加し、成立した金額も上昇 2009年、全国で調印された技術輸出契約の件数は、6580件となっており、前年同期比で若干減少するものの、成立した取引金額では675.48億元、前年同期比で34.62%の増加となった。2005年の技術輸出入取引総額の161.1億元に比べてみれば、2009年はその4倍となっている。これは中国自身の技術的実力、また国際的な競争力が向上しつつあることを意味する。 |
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対比要目 | 2008年 | 2009年 |
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全体的傾向 | 技術市場が発展傾向にあり、技術取引の内容が多彩に | 技術取引契約件数は若干減少するものの、取引成立金額等は引き続き増加 |
契約形態 | 技術取引の波及力が増強し、技術移転契約の増加率がトップに | 技術開発契約と技術サービス契約は技術取引の主要形態へ |
取引分野 | 電子情報産業関連の技術取引は全国取引総量の3割以上 | 電子情報技術の取引は依然としてトップに、製造技術や新エネ技術等が台頭 |
特許技術取引 | 特許技術の取引が上昇傾向にあり、取引総量の増加が明白 | 特許技術取引が若干増加し、実用新案の取引は確実に増加 |
企業の役割 | 企業イノベーション能力が増強し、輸出技術総量の増加が明白 | 企業の技術イノベーションの主体的地位が安定し、技術取引への参加が活発に |
その他 | 各政府レベルの資金投入プロジェクトの成果転化に課題も | 技術輸出入契約は持続的に増加し、成立した金額も上昇 |
このような状況の中、日本では、これまでにも中国における「国際的な技術貿易」という観点からみた中国の技術ライセンス規制や日中間の技術貿易等についての調査1、環境保護や省エネなどの個別の領域における中国の技術取引の一角についての報告はなされているが、中国国内における技術取引や技術移転の実態に関する紹介はほとんど見られない。 本入門では、中国における技術取引とは何を指すのか、技術取引市場とは何か、技術販売契約や技術購入契約と技術輸出入契約とは何が違うのか、いわゆる知財取引は日本とはどこが違うのか、活発な技術取引は中国のどこで行われているのか、などなど、皆様の疑問にお答えする情報を順次公開していく予定です。ぜひ次回以降もお楽しみ下さい。 |
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