ホーム関連動向学会近況横断追跡イベント事例広場知的財産文献案内|Q&A|


 Q&A


ビジネスモデル「探険」談 By 張 輝
>> 連載目次

第47回 研究論文案内: 銀行業のビジネスモデル


 兵庫県立大学経済学部准教授の吉田康志氏は『商大論集』(同大)第68巻2号(2016年12月)にて「銀行業のビジネスモデル−産業レベルでのビジネスモデル記述の試み−」との研究論文を発表した。氏はまずビジネスモデルとは何かについて、以下の通りに述べた。

 「ビジネスモデルは、差別化されたビジネスの様態を記述する際に利用される概念上の ツールである。このためビジネスモデルは、新たなビジネスのための戦略デザイン立案 や、既に成功している企業の成功要因の分析等を目的として、特定の企業や事業プロジェ クトを対象として適用されるのが一般的である。しかし、ビジネスモデルの概念は、個別 企業レベル等のみを対象とするのではなく、その適用範囲をさらに拡大して産業レベルに おいても、つまり特定の産業に属する諸企業において共通する業務のあり方を描く際にも 利用可能だと考えられる。」

 続いて、吉田氏は「銀行という業態を構成する各個別の銀行に存在するであろう業務上の共通項を抽出し、『銀行業のビジネスモデル』として描くことを試みる。また、この作業は、銀行と銀行以外の金融サービス提供者との間の関係や差異を明確にすることにもなると考える。 」と上記した研究論文の目的や意義を明確化したのである。

                
   
                

 小樽商科大学大学院教授の齋藤一朗氏は、「銀行業はこれまで、預金の受け入れとそれを前提とする決済サービスの提供、そして貸出金 による資金供給というコア業務を一体的に営むスタイルを基本とし、ビジネスモデルの典型と してきた。だが今日、人口構造の変化を動因とする経済・社会環境の変化や、情報通信技術を 駆使したいわゆるフィンテック(Fintech)革命の進展が、銀行業に、預貸を基軸とした伝統 的な業務展開の見直しを迫っている。業界構造の見地からも、同質的競争の激化、異業種から の新規参入の脅威、あるいは他業態による代替的な金融商品・サービスの脅威など、潜在的な 収益性を押し下げる要因が数多存在している。」と問題を提起する(信金中金月報、2016年7月)。

 斉藤氏は「イギリスに近代銀行制度が成立した17世紀以来、銀行業のビジネスモデルは、その時々の技 術的な発展を取り込み、顧客のニーズに応えながら、新たな金融商品・サービスの提供や新た なシステムの導入を図り、現代的な“装い”をその身にまとい続けてきた。しかし、ビジネスの骨格は、外見ほどには変わっていない。」「・・・、預金の受け入れとそれを 前提とする決済サービスの提供、それと貸出という2つのコア業務を併営し、それを一体的にオペレートするのが、伝統的なビジネスモデルの型である。 」と見解を示す。

 では、吉田氏はどのように研究し、どのような結論を述べられているのか。

 吉田氏の論文構成は以下のとおりである。すなわち、「第2節では、ビジネスモデル概念の類型化と記述に ついて確認する。第3節では、銀行とビジネスモデルの関係について見たうえで、銀行業のビジネスモデルを記述し、関連する金融サービス提供者のビジネスモデルと比較検討する。そして、第4章で結論を述べ締めくくる。」「その結論は、銀行業のビジネスモデルは、預金受入、貸出、為替の三業務の組合せで あり、投資信託、ノンバンク、資金移動業者はそれら機能をアンバンドルしたものと考え られるが、アンバンドリング後のこれら三業務を単純に足し合わせたとしても、銀行の機 能は再現できず、したがって銀行機能のアンバンドリングは不可逆的なプロセスであるというものである。」

吉田氏の研究論文はこちらでお読みください。


>> ビジネスモデル「探険」談 連載目次


利用規約免責事項お問合せ個人情報編集後記
Copyright(C)All Rights Reserved